シンポジウム「木質系資源を畜産経営に活用する」
主催:(財)森とむらの会

2005.12.5

場所:宮崎県木材利用技術センター

上記シンポジウムに行きました。木造畜舎の研究に取り組んでいる霧島工業クラブのみなさんにも紹介します。(メモ:朝倉)

(司会)森とむらの会理事 杉本 一氏 (元朝日新聞記者、森林文化協会など)
 森とむらの会は林業の応援を外野からしようという趣旨で昭和58年設立
 初代会長は元国鉄総裁高木文雄氏
 木質系資源の利活用の研究を平成17〜18年度行う
 林業・畜産とも全国有数の都城でシンポジウムを行うことになった

宮崎県木材利用技術センター所長 有馬 孝禮氏
 木材利用技術センターは今年で3年目になる
 都城盆地は過去日本が失ってきたものを最後に持っているところではないか
 他地域との違いは、生物資源をベースとした資源の流れがすべてこの盆地の中にあるということ
 資源循環型の地域であると言っても良い
 どこかの一角が崩れるとなりたたなくなる・・地域の連携が大事である
 20年前低コスト肉用木造畜舎の基準書を作ったが利用は進んでいない
 現在「都市エリア産学官連携促進事業」で環境調和型産業の創出を目指している
 もっといろいろな産業がお互いが循環しているということを理解しなければならない
 宮崎県は木材(スギ)の生産量で日本一
 人口では日本全体の100分の1だがスギに関しては7分の1から6分の1くらいである
 東京が10分の1くらいなので東京より大きいことをやるくらいの気持ちを持たなくてはならない

中央畜産会主査 佐々木 国利氏
 日本の畜産は農業の役畜としてスタート、本当の意味の畜産は戦後
 規模拡大、技術高度化をやってきた
 例として人口受精などの技術で乳牛の乳量は飛躍的に増えている
 畜産関係の機械化はまだ世界に追いついていない
 畜産は加工型の産業と言われている
 一方で糞尿処理の問題は世界の規制の流れに押される形
 畑・水田への還元はなかなかうまくいかない

はざま代表取締役 間 和輝氏
 これまで木材業協会や県などに呼びかけてきたがなかなか連携はできていない
 なぜおが粉を使うか・・コストが安い、臭いがない、健康、糞尿処理に電気・機械があまり必要ない
 大分県などは木造のモデル畜舎を作っている
 鉄骨の畜舎は牛舎では1頭あたり6万円かかる
 牛舎で3万円、豚舎で1万円くらいでモデル畜舎が作れないか
 地球温暖化の対策として緑化推進が大事である・・畜舎の周りに樹木を植える

全国木材組合連合会企画部長 細貝 一則氏
 昭和55年に2兆6千億円だった製造品出荷額が平成14年は8,000億円になった
 畜産環境対策でおが粉の量が足りない状況も発生
 平成9年の廃棄物処理法で焼却炉規制がはじまった
 地域によっては対策に困っている(近くに需要がない)
 木材を乾燥エネルギーとして利用するケースも増えてきた
 樹皮の利用は根本的な解決はできていない、敷料として利用してもらいたい

宮崎県畜産会専務理事 森高 秀満氏
 アンケートの結果の解説・・別紙
  http://miyazaki.lin.go.jp/shikiryou/s3_h15_shiyou_chousa.html
 宮崎県の畜産農家は約11,000戸である
 アンケートを基にのこくずの必要量を推計すると
   酪農22,000立米、肉用牛190,000立米、養豚50,000立米、ブロイラー30,000立米
 木質バイオマスビジョン(宮崎県)によると県内の廃材量は、
   おが粉75,000トン、端材109,000トン、バーク59,000トン、計243,000トン
 上記のおが粉75,000トンは約120,000立米くらい
 別におが粉専門業者があり主要6業者を調査したところ100,000立米だった
 バークを敷料として利用するのを足して約300,000立米が畜産に使われているのではないか
 のこくずを家畜の餌に利用する研究もしている
   リグニンが多いと消化しにくい、針葉樹より広葉樹の方が消化が良い
   県内で70戸くらいエサに利用している
 ブロイラーの糞を燃料として利用しているところが県内2ケ所ある

会場からQA
木脇さん(木材関係)

 鹿児島県は中国から木材を持ってきているが宮崎県はバランスがとれている
 木材業者の数は減っているしこれからも減るだろうが、取扱量は変わらないだろう
 足りなければのこくず製造機もあるので、端材をのこくずにすることで量産できる
 豚舎や鶏舎などを木造にする動きもあるが、間伐材というイメージがあるのか価格が安い
 産学官で研究してもらいたい

有馬所長
 20年前に低コスト木造畜舎の基準を作ったのに利用が進まないのはどこかに損という考えがあるからではないか、木材業、施工業、畜産業それぞれが少しずつ負担しなければならない
 お互い腹を割って話すことが必要ではないか

間社長
 うちにも畜舎を建築できる人間がいる、木材業も畜舎を作って競争しよう
 公開してマスコミに取り上げてもらえば注目が集まるのではないか

その他
 おが粉は完熟しないと農作物に悪い影響があるのではないか
 糞を燃料として考えたらどうか
 硝酸系窒素の問題もあり、地域全体の問題として考える必要がある
 おが粉を使うと呼吸器系疾患が多くなるのでは
 西都・児湯地区で糞尿を使ったバイオ発電の計画があったが総論賛成、各論反対で頓挫した
 端材と畜糞で発電したらどうか
 県の統計では畜産廃棄物389万トン、農地に還元が269万トンで120万トン過剰

パネラー一言ずつ
森高氏
 日本全国では畜産廃棄物はバランスするのではないか 肥料が足りない県もあるし、稲ワラを輸入しているのに焼いている地区もある
 モデル畜舎を県内10ケ所くらい作ったらどうか

細貝氏
 畜産廃棄物は移動がむずかしいのでローカルエネルギーとして考える方がいいのでは

間氏
 田んぼはほとんど化学肥料で、有機肥料を使っているのは何パーセントもない。ほんとうに良い有機肥料を使えばおいしい米ができる。ほんものの有機肥料のニーズはいくらでもある。

佐々木氏
 飼料用の穀物を輸入しているがその栽培面積を計算すると日本の国土より広い
 沖縄や東南アジアの赤土は有機成分がない(早くなくなる)有機肥料のニーズがある

有馬所長
 バイオマスは広い領域を含んでいる
 地域によって事情がそれぞれ違う
 エネルギーの問題や灰の処理の問題など、まだまだ解決しなければならない問題は多い
 木材利用技術センターへ期待が大きいが10数人の研究員に年間700件を越す相談がある
 今まで堆肥などの研究はあまりやってこなかった これからは連携が大事
 地域の問題は一つずつつぶしていくしかない
 前の方(お金になるところ)はみんなやっている
 後ろの方をやろうとしているのが「都市エリア産学官連携促進事業」である


宮崎県木材利用技術センター大会議室で開催

森とむらの会理事 杉本 一氏

シンポジウムの始まり

宮崎県木材利用技術センター所長 有馬 孝禮氏

中央畜産会主査 佐々木 国利氏

(有)はざま代表取締役 間 和輝氏

全国木材組合連合会企画部長 細貝 一則氏

宮崎県畜産会専務理事 森高 秀満氏