国体選抜選手や若い連中が、山下さんについて高岡で練習するというので、藤山に声をかけて一緒に出かけてみた。今回は遊びはなし。だから漕ぐのは若いもんに任せて、もっぱら写真を撮ることに専念する。


 それにしても、ずいぶんと鍛えられる。インターバルだ、ダッシュだと、さんざんにしごかれるが、若い連中は「へ」でもないらしい。なにせ、これでようやく、体が暖まったからと瀬に降りることになる。小生ならたいがいここらで、ビールの2本も飲み、体を冷やしてからでないとオーバーヒートしてしまう。
 ポンコツには、ビールが効く。



 空も水もどんよりと濁っている。高感度フィルムがあるおかげで、この天気でも写真が撮れる。ありがたいことだ。水も、透明度ゼロ。広い大淀川流域の汚れたものを自浄しきれなくて、のたのたとここまで流れてきた。が、しかし、ここに瀬がある。鮎のハミ跡も岩に残っている。見た目ほどは汚れていないのかもしれない。
 若いもんは、そんなことにはぜ〜んぜんお構いなく嬉々として船を漕ぐ。
 環境問題も、太古の歴史も、ここにはないのである。

 このワイルド艇を漕いでいるのは女の子である。石井さんという大学生で、なかなか愛敬のあるかわいい娘だが、やっぱり、もちょっと女の子らしく、カラフルなものを身につけてほしい。ヘルメットが白で、着てるものが紺一色じゃ、色気もなんにもありゃしない。彼女もこの写真を見たら、それに気がつくかもしれない。たまには自分を、写真というものを介して客観的に見ないといけない。目覚めよ、汝は女なり。
 紅一点とは、もっと華やかなもののはずだ。

 紅一点と言えば、登山家の今井通子女史を思い出す。当時から東京女子医大の女医さんで、なかなかきれいなおねぇさんだった。JECC(Japan Expert Climbers Club)という山岳会で、男どもの憧れだったみたいであるが、彼らにはチッとばかし荷が重かった。それでも、四ッ谷の喫茶店でお茶をご馳走になったときなどは、パカパカと煙草をふかし、「忙しいのよ。だから、短い時間でパッパッと吸える煙草はないかしら。」と、のたまうようなチャキチャキのところもあった。そのうちに、かもしか山岳会のダンプさん(もちろんあだ名である)と結婚されたと聞いた。
 ハハーン、美女と野獣でありますな。

 我らが藤山も、高岡の流れをものともせずに漕ぐ。しかし山下先生曰く、我流、自己流が出て仕方がないそうな。もっと基本に忠実でなくてはならない。どうも小生があちこちと連れてはいっても、遊んでるほうが多いからそうなるのであろう。これからはもっとビシビシと鍛えることにしよう。と、そうは言っても、鍛える方が遊びたい盛りのオジさんであるからして、無理からぬことであるかもしれない。
 マァ、ボチボチやりまっさ。