北郷 広渡川


 昨日の土曜日、朝方には時間雨量50ミリという猛烈な雨が降った。その雨が降り出すちょっと前には、そうねぇ、朝の5時ぐらいだったかな。雨なんか降ってなかった。私はいつものように、血統書付きのりっぱな雑種の愛犬2頭と散歩に出かけた。  そこで降られた。もうアッという間にびしょ濡れの濡れ鼠。犬もネズミになっちまうぐらいの大降りだった。
 そんなに降ったんだからと、北郷、広渡川へ出かけた。濁った水がゴウゴウと流れてると思いきや、水量は多いものの青々とした水が流れていた。しかも、梅雨空を忘れさせてくれるぐらいの上天気。たまにはこんなこともあるか。

 宮崎県選抜の4選手が全員揃い、宮崎県ミスターカヌーである山下もコーチに駆けつけて、メガホン片手に選手に檄を飛ばす。この檄が若いモンにはけっこう効くのである。見てる間に上達する。良き先輩に恵まれた若いモンは幸せである。  私なんぞは、一漕ぎしちゃビールを飲んでる。こんな日には、気ままなオジさんもそれなりに幸せでありますな。


 ここから下っていくと、町営の蜂の巣キャンプ場がある。テニスコートがあったりしてそれなりに充実した設備があるらしいけど、私はトイレぐらいしか利用したことがない。キャンプをキャンプ場ですることはアホだと思っているから、それも、しかたがない。


 選手達にとっては訓練であり練習である。竹竿と言えどもれっきとしたゲートである。しかし、私にとっては違う。この天気と青々とした水、すばらしい自然が準備してくれた遊び場で気楽な時間を過ごす。ビールの酔い覚ましに船を漕ぎ、また、飲む。訓練も練習もゲートも、私には関係がない。あるのは、この川と若い仲間達。贅沢な日曜日である。


 川下にカメラを向けたら、日高と美子ちゃんが上がってきていた。日高が意識したのかポーズをとる。仕方なしにシャッターを切った。でも、おまえを撮るつもりはサラサラ無かったんだよ。おまえの後の美子ちゃんを撮るつもりだったのに。なんでおまえがそこまで決めなきゃなんねんだよ。それにしても、ビシッと決まったネェ。


 白い波に揉まれてヒクヒクとしながら私も漕ぐのであります。「おっと、危ねぇ」などと言いながらもこれが楽しい。山下がいみじくも言うのです。 「オレも船、持ってくれば良かったなぁ」 選手としての長い期間、彼は一人で黙々と漕いできた。そんな彼が、ある日突然船から降りて漕がなくなった。彼なりにふっきれたものがあったんだろう。  でも、やっぱり彼も一緒に漕いでほしい。と、私は思う。若いモンも当然私と同じであろう。