講座No.23「環境負荷低減型食料生産技術の展開」

2007.2.24 10:00〜12:00

場所:都城高専AVR室
講師:宮崎大学農学部大野和朗助教授


 前回の大野助教授の講座No.10 「天敵を利用した減農薬栽培技術」では、日本の単位面積あたりの農薬使用量は世界一であることや、農薬を撒くことで天敵も殺し、結果として害虫が増え、さらに農薬が増えるという悪循環になっていること、IPM(総合的害虫管理)特に生態学に基盤をおいたIPMへと発想を変えていく必要性などについて学んだ。
 今回は引き続き、環境負荷を抑えた農業についての講義であった。畑やビニールハウスには沢山の野菜が植えられており、自然の体系から考えるとおかしい。そのような環境では無農薬では無理で、最低限の農薬は必要であるが、今は量が多い。環境負荷低減型の農業にしていかなくてはならない。農薬の負荷が大きいと他の生物や作物に取り込まれるし、肥料を使いすぎると川に流れたり地下に浸透し、富栄養化や土壌・地下水の汚染につながる。
 スイスなどでは有機・減農薬野菜の値段は高い。県の戦略として取り組む必要がある。高知県では小中学校の出前授業までして天敵を使った減農薬栽培の教育をしている。
 農業の後継者不足の原因としては作業のきついことが大きな要因となっている。ナスやトマトの着果作業はホルモン剤で1つずつ処理していたが、マルナハバチを利用して手間が省けるようになってきた。
 生態学に基盤を置いたIPMの目的は自然制御因子を最大限に引き出し、被害が及ばないレベルに管理することである。生物由来の(分解が早い)化学物質や合成フェロモンによる害虫防除などの技術も普及してきた。このように選択的農薬を使うことにより天敵や天敵微生物まで殺さないことが大事である。
 モノカルチャー(単植栽培)はいろいろな害を引き起こす可能性がある。日本は農地がせまいので北海道を除きポリカルチャー(混植栽培)と言えるのではないか。ポリカルチャーの方が耕地生態系が複雑化し天敵を利用しやすい。
 現在、天敵は値段が高く普及しないので、地バチなどの土着天敵の保護と積極的利用に取り組んでいる。エンドウの葉や大根の葉などについた寄生蜂の幼虫を利用できる。
 花や飼料作物にも天敵を誘引できるものがある。農作物の周りに植えることで天敵のすみかにする、ハウス内に米ヌカなどで作った天敵の餌を置いて数を増やすなどの試みも行っている。


大野助教授

ホルモン剤のかわりに着果をしてくれるマルハナバチ

農業後継者不足の問題はきつい作業に原因?

Biological control based IPM

さらに進んだEcologically control based IPM

せまい耕作地が隣り合って生態系が複雑化、ポリカルチャー

寄生蜂が卵を産みつけたエンドウの葉をハウス内につるしておくと害虫が発生するころに天敵の寄生蜂も羽化

暖かくなると天敵が羽化し、害虫を食べる

宮崎に多い大根の葉も利用できる。

雑草のかわりに花を植えれば一石二鳥?

天敵の餌になるダニを発生させる